久しぶりに訪れてみた学生時代のアパートはさすがに建て直されており、住宅地にも、榛の木立の残る空き区画など見当たりはしなかった。そこに寄せるように、確かツノダ製の中古ミニサイクルを停めておいたアパートの前のフェンスは、コンクリートの低い塀になっていた。その前の道も、いやこんなに狭苦しかったかな、と思うほどだった。家々の傍らに停められたマイカーも、昔より一回りは大きくなったせいか、余計に宅地を過密に見せている。
(関連情報)
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それでも、その国立の住宅地の中には、まだ武蔵野の雑木林の残照のようなオーラが残っていた。わずかな起伏を残す宅地の褐色の土や、駐車場の隅、あとあとで植えられた庭の木、古びた木造の2階家、そんなものの集積の底に、森の影があった。私自身、そのことに相当驚かずにはいられなかった。目に見える形で雑木林の痕跡があるというのではなく、木々の呼吸が感じられるような気がしたのだ。まあ国立の例は、いわば私の主観的投影像だから、ちょっと勘違いされると申し訳ないものの、都市に暮す人が思っているより、そこには圧倒的な自然力が生きていることは事実なようだ。